P011 「環境要素」と「人の滞留行動」の関係からみる水辺の空間分析

「環境要素」と「人の滞留行動」の関係からみる水辺の空間分析
〇佐々木美佳1
1 滋賀県立大学環境科学部環境建築デザイン学科

要旨
自然のうつろいへ人々の意識を導く都市の水辺は、人々の癒しや喜びを支える重要な場所となり、都市生活者が真に水辺らしさを享受できているかどうか、人間五感に訴える次元での検証は今後の水辺整備の鍵となる。大津市街地に隣接した琵琶湖岸を敷地に、水、風、光、音、匂いなどの複数の「環境要素」とそこに居る人との関わり合いを可視化するツールを用いて、滞留者のふるまいがどれほど環境と呼応しているか167のふるまいの事例を分析した。水辺を歩き、ツールを通して五感を駆使しながら環境と人の関係性を見つめ、課題を感じ取ることで、水辺に集う他者に想いを馳せ、まちの水辺を生かすためのヒントを見出す手段となることを示す。

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この投稿へのコメント

  1. 浦﨑真一 said on 2021年10月30日 at 3:15 PM

    多くの環境要素と滞留行動を抽出した労作に敬意を表します。
    挙げられた滞留行動が167種であるのは、観察の結果167種あったのか、前もって行動をある程度分類されたものなのかご教示ください。また、環境要素の音・風・匂いは主観性が強いように思いますが、とりまとめのうえで客観性を高めるために工夫されたことがあればご教示ください。

    • 佐々木美佳 said on 2021年10月31日 at 11:46 AM

      コメントありがとうございます。
      167種は、観察の結果採取できた事例数です。湖岸は通過的利用が多いものの滞留利用は少ないという事前調査から、なるべく多くの滞留行動を採取して滞留の傾向を掴むために、5月・6月の二日間、8時半から日暮れまでの時間湖岸で過ごし観察した結果の数です。今回のポスターでは割愛しましたが、水辺という特異な環境がある場所にも関わらず見られたふるまいは、屋根下の日陰のベンチで、休む、食べる、話す、スマホをする、の大きく4種と、東屋という視覚情報による滞留がほとんどという限定的な大津湖岸の使われ方の課題が見えました。

      2点目についてですが、今回の手法では、環境要素の読み取りにおいては観察者の主観に頼る部分が大いにあります。調査時は、温度湿度・風速風向・騒音計を携帯して、滞留者の近くに観察者自ら同じ様に滞在しその場の環境要素と共にデータも記録しましたが、あえて直接数値データは用いませんでした。代わりにビジュアルで感覚的に土地柄を伝えるために、フィールドで個人が様々に感じる曖昧な感覚事項を、他人に伝える際に凡例という枠組みを作成し、そこに落とし込んで記号化することで、主観から客観性を生み出せないかなと挑戦したものになります。主観的につけた赤いハイライトの個数で定量的に個々の空間事例を分類できるようになりました。滞留者が環境要素の何を感じてその場所を選んでいるかについて、一貫して一人の観察者が注意深く観察した事例の蓄積量というものは、一つの傾向を伝えるものになるのではないかと考えていますが、客観性のご指摘は今後の大きな課題です。ご指摘いただきありがとうございました。

      • 浦﨑真一 said on 2021年10月31日 at 2:11 PM

        ご回答ありがとうございます。
        限定的と評価されながらこれだけの行動を抽出された意義は大きいと思います。
        また、データを記録されたうえでの感覚的な表現ということで、滞留行動という人間主体の事象の検証としては重要な視点だと思います。今後の展開を楽しみにしております。

  2. 曽和治好(武庫川女子大学・景観建築学科) said on 2021年10月31日 at 11:36 AM

    パターンランゲージとして考えた場合、それをツリー構造で捉え直すのか、それともセミラティス構造で受け止めるのか、設計や計画に取り組む立場からは興味深い論点かと思います。風景をデザインする場合には、それが主観的な要素を含むので、まずデザインする側からパターンランゲージを提示することがスタートラインとなるでしょう。今回、ご報告いただいた分析には、音・テクスチャ・香りなど、五感の要素から琵琶湖周辺のパターンランゲージが示されています。このような多様な指標は、琵琶湖周辺のデザインに取り組む際の貴重な知見となると思います。さらに琵琶湖に関するデザインを展開する際に、大いに参考にさせていただきたいと感じました。ありがとうございました。

    • 佐々木美佳 said on 2021年10月31日 at 4:38 PM

      貴重なご意見をありがとうございます。ランドスケープだからこそ成し得る曖昧さを残した計画があるだろうという想いがあります。その際の設計の出発点として、今回提案させていただいた、五感を空間と合わせて可視化する方法、パターンランゲージの様なものを、水辺の利用者を含めたより多くの人と共有して街の自然と向き合うプロセスを踏むことができれば、より良い空間創造ができるのではと考えます。これらの導入や活用に向けた方法も合わせて今後は考えていければと思います。ありがとうございました。

  3. 広脇 淳 said on 2021年10月31日 at 3:41 PM

    五感や六感に緑や自然の意義が大いにあるとわかっていながら研究として扱うのは難しい部分だと思います。今回の発表ではその難しい環境要素を視覚的にもわかりやすく捉えた発表で、大変興味深く拝見しました。

    • 佐々木美佳 said on 2021年10月31日 at 4:49 PM

      コメントありがとうございます。主観性の強い内容に苦戦していますが、自然の意義を、身近な空間と繋げて自分ごととして感じられるようになる方法となる事を狙いにしているので、関心を寄せていただき大変嬉しく思います。温かいお言葉に勇気づけられました。

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